100周年を迎えるシュタイナー教育とは|競争のない遊びの中で子どもを育てる

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Sawa

フリーライター。医療・福祉分野での執筆・編集経験10年以上。一般誌やビッグイシューなど社会問題系の仕事も。ライフワークは子どもに関すること全般。英国でAMI国際モンテッソーリ教師資格を取得。保育士。ピースボート2回乗船を含めヨーロッパ・アフリカなど50か国訪問。ホテル・民泊・シェアハウスに居住。


天然素材のものに囲まれて、競争のない遊びの中で子どもを育てるシュタイナー教育。

“持続可能な教育”とも言われる幼児教育法で、

世界80か国に2000以上のプリスクール*があり、日本でも注目されています。

 

人間の成長を7年周期で捉え、7歳まではメルヘンの世界でのびやかに遊ばせるという、

シュタイナー教育についてまとめてみました。

*International Association for Steiner/Waldorf Early Childhood Education (IASWECE) 公式ウェブサイトより

 

<この記事でわかること>

・人工的なものをできるだけ排除し、自然とともに生きることを重視するシュタイナー教育

・シュタイナー教育は、人間の芯の部分をしっかりと根付かせる教育法

・子どもの成長は7年周期

 →0〜7歳は「からだ」を育てる時期、7〜14歳は「こころ」の成長、14〜21歳は「自我」の成長

・モンテッソーリ教育との共通点

 

持続可能な教育

木製のおもちゃ棚にはどんぐりや松ぼっくり、木切れなどが並び、

柔らかな風がピンク色のカーテンを揺らす。

穏やかな声で語りかける先生。ゆったりと過ごす子どもたち––

 

シュタイナー教育を行う学校の一風景です。

テレビ・漫画・活字・プラスチック素材など人工的なものをできるだけ排除し、

自然とともに生きることを重視しています。

 

時代に逆光しているような印象をもつ人がいる一方で、

普遍的なものを大切にする思想などが支持され

持続可能(=サスティナブル)な教育”とも言われる幼児教育法です。

 

シュタイナー教育では、

この時期には安心して育つことができる場所を与えることが大切だとされています。

安全・安心を感じることで、子どもの自己肯定感が培われていくのです。

 

たとえば無人島に取り残されたとき、

本当に必要なのは生き残るためのサバイバルスキルよりも、

困難な場面においてもくじけずに、

自分を信じて揺るがない心ではないでしょうか。

 

そんな、人間の芯の部分をしっかりと根付かせることを目指しています。

 

多分野に及ぶシュタイナー人間学

教育、芸術、医学、農学など多分野に長けていたルドルフ・シュタイナーは、

1919年、ドイツに最初のヴァルドルフ(自由)学校を設立します。

 

これは、当時の学校のあり方としては非常にまれな

“人間形成”を目的につくられた学校だといわれています。

この最初の学校設立から数えると、2019年の9月にシュタイナー教育は100周年を迎えます

 

シュタイナーは思想家、哲学者であり、

人智学(アントロポゾフィー)の創始者です。

 

人智学は、人間は宇宙や自然との関係の中にあると説き、

それまでの人類学と神智学を仲介するカテゴリーにあたります。

 

このような下地から、シュタイナー教育は、

ほとんどが精神論と言っていいほどスピリチュアルな世界観をもっています。

 

シュタイナーの活動から宮沢賢治を思い起こす人もいるかもしれません。

賢治は、独特な世界観の詩や物語を多く残すと同時に、教育者であり、

生徒に農業や芸術を教え、奨励しました。

 

宇宙や自然のことを強く意識し、

人間は“生かされている存在”だと考えていた思想家でもあります。

 

7年周期で成長する

シュタイナー教育では、人間は7年周期で成長すると考えられています。

 

0〜7歳は「からだ」を育てる時期。

生命力がしっかり体に宿るまでは、知的な面を育てるのではなく、

メルヘンやファンタジーの世界で遊びながら身体づくりをします。

 

この時期には、遊び方の決まったおもちゃを用いるのではなく、

自然の産物を中心に木枝、布切れ、紐といった素材そのものから、

子どもの自由な発想や想像力でさまざまな遊びに広げていけるようにします。

 

また、ミツロウや無垢材などの天然素材を使ってさまざまな手仕事をします。

 

こういった遊びのなかで、競争や失敗にとらわれず、

あるがままの自分や物事を受け止める資質が育まれていくのでしょう。

 

さらに、7〜14歳は感情や知識といった「こころ」の成長、

14〜21歳は思考など「自我」の成長を目指します。

 

これは少し珍しい考えかもしれません。

日本の公教育でも7歳というのは小学校1年生にあたる歳です。

シュタイナーにならえば、授業を始めるのは7歳ではまだ早い子がいると考えられますね。

 

モンテッソーリ教育との共通点

シュタイナー教育は、モンテッソーリ教育と対照的な文脈で紹介されることが多いようです。

シュタイナー教育では、幼児期には知的な活動を重視しないところから、

そう思われるのかもしれませんね。

 

ただ、どちらも、大人が子どもに何かを教え込むのではなく、

子ども自身が成長に必要なものすべてを生まれもっている

という考え方に立っている点は同じでしょう。

 

もう1つ共通点は、どちらも100年の歴史をもつ教育だということです。

長く受け継がれてきたということは、それだけ人々の支持を集めてきたということ。

また、その人たちの創意工夫が支えてきたものだということでもあります。

 

たとえば、モンテッソーリ教育でも、

子どもとTVやインターネットなどをどう関わらせるかということが課題になっています。

そして、そうしたものの多くは、創始者の時代には無かったものです。

 

小学生の甥っ子はネットゲームが好きで、

インターネット上で友だちと集まって遊ぶのだそうです。

 

それぞれの家を訪ねなくても友だちと集まって遊べるようになったのは、

よいことでしょうか?よくないことでしょうか?

 

試行錯誤が必要なのはどの教育でも変わりませんが、

常に、創始者の考え方に対して「解釈」とか「応用」

といったことが必要になってくるところは、

シュタイナー教育とモンテッソーリ教育に共通する課題ではないでしょうか。

 

どんな教育であっても、その時々において、

関わっている人たちが知恵を出し合い、話し合って決めていくべきことがたくさんあるのです。

 

自尊心や自己肯定感について見つめ直してみる

子ども自身の“生きる力”を大切にするシュタイナー教育について紹介しました。

 

近年、子どもの自尊心や自己肯定感の低さが、

いじめやキレやすさといった問題につながっているとの指摘もあります。

これを機にシュタイナー教育のエッセンスを子育てや人間関係に取り入れてもいいかもしれません。

 

また、シュタイナーの思想は医療や芸術など多岐に及んでいます。

興味のある方はさらにリサーチされてみてはいかがでしょうか。

 

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