今こそ観たい!「家族」を描いた是枝監督作品3選

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りん

映画大好きアラサー女子の、りんです! 大学卒業後、保育士として勤務したのち、ライターへ転身。 現在は保育士向けの転職サイトや映画サイトを中心に活動中。 3か月前、低糖質ダイエットに挑戦し-3.5kgに成功! 趣味はカフェ巡りと食べ歩き、猫と戯れること。 最近はInstagramにて日常系漫画を更新中。


こんにちは。映画好きライターのりんです。

 

是枝監督の新作映画『真実』が、

第76回ヴェネツィア国際映画祭のコンペティション部門

オープニング作品として選ばれました。

 

日本人監督作品が選ばれるのは史上初となる快挙!とのこと。

ちなみに第73回のオープニング作品は『ラ・ラ・ランド』だそうで、

本当に名誉あることなんです!おめでとうございます!

 

気になる映画の内容は家族の物語だそうで、

公式サイトの監督によるコメントは以下の通り。

物語の七割は家の中で展開していく、

小さな小さな、家族のお話です。


その小さな宇宙の中に出来る限りの後悔や嘘や見栄や寂しさや、

和解や喜びを詰め込んでみました。

どうぞ、お楽しみください。

 

ということで今回は、これまで様々な家族の形を描いてきた監督の作品の中で、

特にこの季節に観たい「夏×家族」作品をご紹介します。

 

※この記事には映画の内容が含まれます。

 

是枝裕和監督の作風

東京生まれの監督は、映画好きの母の影響で、映画漬けの幼少期を過ごします。

早稲田大学卒業後は、映画監督を目指しながら、

番組製作会社にてドキュメンタリー番組を手掛けます。

 

1995年監督デビューの『幻の光』で、ヴェネツィア国際映画祭で撮影賞を受賞。

その後は、福山雅治主演の『そして父になる』、

2018年発表の『万引き家族』などで、

カンヌ国際映画祭においてパルム・ドールなどの賞を受賞。

 

全ての作品において、監督、脚本、編集などを自ら手がけています。

 

その作風は、社会問題などを鋭く捉えながら、

環境音的に繰り広げられる何気ない会話劇の中で、

登場人物の繊細な心理描写を切り取っていく作風が特徴

 

また、会話劇中のコメディ的な要素や、美しい季節の描写が、

厳しく辛い作品テーマとのコントラストになっているのも特徴で、

人間の本質を捉えたセリフや描写が余計に胸を打ちます。

 

険悪家族の再生と絆を描く『歩いても 歩いても』

是枝監督の6作品目の作品。

スペインの名誉ある映画祭、サン・セバスティアン国際映画祭で、

自身初となる脚本家協会賞を受賞した。

 

あらすじ

15年前に亡くなった主人公良多の兄の命日。

横山良多(阿部寛)は、再婚相手の妻ゆかり(夏川結衣)と、

その連れ子のあつし(田中祥平)とともに、実家に帰省する。

 

久々に両親との再会を迎えた良多だが、

父の恭平(原田芳雄)とは相変わらず折り合い悪く、

母のとし子(樹木希林)も、子持ちで再婚のゆかりに対して

あまりいい感情を抱いていない様子。

 

更に亡くなった兄が命がけで助けた少年も家を訪れ、

家族の本音はさらに加速する。

 

亡き家族へのそれぞれの想い

横山家は一見ふつうの家庭に見えますが、

亡くなった家族を「決して忘れない」複雑な家族。

 

それぞれが亡き家族に思いを馳せ、

自分なりに解釈するあまり他者を傷つけてしまう。

良多はそんな両親にうんざりして、

ついそっけない態度をとってしまいます。

 

亡くなった長男が助けた青年を毎年家に呼ぶとし子が、

その理由を吐露するシーンは、

抗うことのできない「憎しみ」や「やるせなさ」を、見事に表現しています。

 

ほっこりとシリアス/フィクションとリアルを表裏で描く

本作は、両親を亡くした是枝監督が自身の感じたことをベースに作られたそう。

 

家のところどころにある手すりを見て、両親の老いを感じ始める良太。

そんな主人公が、母との何気ない会話の中で思い出せなかったことを、

母と別れた後に思い出し、愚痴をこぼすシーンがある。

 

とりとめのない会話と同じで、人生はちょっと間に合わないことの繰り返し。

「あと少し早く着いていたら順平は、、、」という老夫婦の後悔。

登場人物それぞれの「後悔」は、監督の実体験と重なっているのかもしれません。

 

色とりどりの夏野菜や鰻やスイカなど、

旬の物が並ぶ食卓を囲んで、家族仲睦まじくつつくシーンや、

子どもの笑い声、走り回る足音、汗で濡れた髪、

ゴンチチさんの音楽がぴったりなほっこりしたシーンの数々。

 

そしてその対極である、樹木さんや、原田さんの胸をつくセリフが印象的な、

死別や老いなど抗えない現実描写のシーン。

 

違う側面を持つ2つのシーンが、

合わせ鏡のように表裏で描かれていく、監督渾身の作品。

 

出演者:阿部寛、夏川結衣、他

監督・脚本:是枝裕和

公開年:2008年

製作国:日本

 

離れて暮らす兄弟が巻き起こすロードムービー『奇跡』

是枝監督9作目の作品。

サン・セバスティアン国際映画祭で最優秀脚本賞と、

カトリックメディア協議会賞を受賞し、イギリスでも公開された。

 

あらすじ

離婚によって離れ離れになった家族と、

もう一度一緒に暮らすことを夢見る航一(前田航基)。

 

ある日、航一はクラスメイトから

「九州新幹線が全線開通する朝、新幹線の“つばめ”と“さくら”がすれ違うとき、

奇跡が起こって願いが叶う」というウワサ話を聞く。

 

鹿児島で母ゆかり(大塚寧々)と祖母(樹木希林)と祖父(橋爪功)と暮らす航一は、

父の健次(オダギリジョー)と暮らしている弟の龍之介(前田旺志郎)と

連絡を取り合い、ある作戦を決行する。

 

「現実」に立ち向かう子ども達のロードムービー

家族をどうにか修復しようと奮闘する兄の航一。

物語中盤、決めた計画の実行を一度諦めるが、

家族の想いや自分の気持ちに耳を傾ける内に、決意を新たにする。

 

周囲の友だちも、自分の将来の夢や、家庭環境に悩んでいた。

そんな彼らが「奇跡」を信じ、目的を達成するために決行する冒険。

冒険の中で次々と起こる「奇跡」。

子ども達のそれぞれのエンディングはとても清々しかった。

 

九州新幹線全線開通を記念に製作された本作。

地元の方の、完成までの長年の思いなどともリンクする、

夏にぴったりなリアルロードムービー作品。

 

実は台本なし!「まえだまえだ」の兄弟コンビ芸

是枝監督は以前から、子役に台本を渡さず、

撮影直前に口頭で指示を出すというスタイルを貫いています。

 

本作でも、主演を務めた漫才コンビ「まえだまえだ」のふたりには

台本が渡されず、直前に「こういうシーンを撮るからね」

と教えてもらう程度だったそう。

 

インタビューでは、監督に「撮影の間、隣の部屋で遊んでていいよ」

といわれた兄の航基が、何の気なしに遊んでいたら、

実は是枝監督が気づかれないように撮影していたというエピソードも。

 

口頭の説明だけで、さらっとナチュラルな演技をこなしてしまう

ふたりの演技力には驚かされるばかり。

 

あのアイドルの子役時代が見られたり、

前述の『歩いても 歩いても』他、

是枝作品常連の俳優陣が、揃い踏みなところも見どころのひとつ。

 

出演者:前田航基、前田旺志郎 他

監督・脚本:是枝裕和

公開年:2011年

製作国:日本

 

疑似家族が醸す本物の愛『万引き家族』

是枝監督14作目の作品。

日本アカデミー賞、最優秀作品賞、最優秀監督賞、

最終週主演女優賞含む最多8部門を受賞。

 

興行収入は是枝監督作品史上最大の45億円を超える大ヒットとなり、

興行的にも大成功しました。

 

あらすじ

家族のために万引きをする治(リリー・フランキー)と翔太(城桧吏)。

 

ある日、治は団地のバルコニーの廊下で、ひとりたたずむ少女を見つけ、

初枝(樹木希林)、信代(安藤サクラ)、亜希(松岡茉優)たち

家族が待つ家に連れて帰る。

 

一家は虐待を受けているゆりを「りん」と名付け可愛がるようになるが、

とある事件が家族を離れ離れにする…。

 

「血のつながり」ではなく「心のつながり」

柴田家は万引きによって生計を立てて暮らしている“疑似家族”。

 

夫婦と名乗っている信代と治も夫婦ではありません。

治の母とされている初枝、信代の妹とされている亜希、

そして治の息子とされている翔太でさえも血縁関係はないのです。

 

だからこそ、血がつながっていない柴田一家が、

貧しいながらもささやかな日常を幸せそうに過ごす姿が、

美しく、尊く感じるのでしょう。

 

特に、花火が見えないのにも関わらず、

庭に出て音だけを聞いて楽しむシーンが印象的です。

花火そのものに興味はなく、

「みんなで一緒にいること」に幸せを感じているように見えます。

 

「血のつながり」でも「時間」でもない、「心のつながり」の尊さが胸に響きます。

 

依存だけでは家族になりえない現実の厳しさ

治や信代、亜希は家族から愛されない幼少期を過ごしたという共通点がありました。

彼らは翔太やりんを愛することで、「愛されなかった事実」を帳消しにしようとします。

 

それはある意味「共依存」ともいえるような関係…。

治たちは、“万引き家族”にしか居場所がなかったのです。

 

しかし何であれ、治たちが家族を愛していたのは変わりようのない事実。

ただ、彼らには愛を貫けるほどの地位も経済力もありません。

柴田家を待っていたのは、今まで目を背けてきた厳しい現実です。

 

バラバラになった柴田家が、一件を通じて何を手に入れ、何を失ったのか。

気になるラストはぜひ本編でご覧ください。

 

出演者:リリー・フランキー、安藤サクラ 他

監督・脚本:是枝裕和

公開年:2018年

製作国:日本

 

是枝裕和監督の作品にあふれる多様な“家族のカタチ”

今回ご紹介した是枝監督作品は、「夏」や「家族」が印象に残る作品です。

 

血のつながりがあってもなくても、それぞれ違った問題を抱えている家族たち。

しかし、どんな形の家族も肯定するような「優しさ」が感じ取れるのも、

是枝監督作品の魅力です。

 

新作『真実』は、

カトリーヌ・ドノーヴ、ジュリエット・ビノシュ、イーサン・ホークなど、

豪華なキャストが出演しており、

どのような「家族」が見られるのかとても気になるところ。

公開は10月11日(金)!

 

今後もaround編集部では、話題の映画情報をピックアップしていきますので、

ぜひチェックしてください!

 

<映画情報>

『歩いても歩いても』公式サイト 

『奇跡』Amazonsサイト

『万引き家族』公式サイト

 

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4 件のコメント

  • 歩いても歩いても大好き。
    真面目なシーンとくすっと笑っちゃうシーンの繰り返しで。

    45才/女性/神奈川

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