新型コロナウイルスが世界中で猛威をふるったパンデミック期においては、
世界各国で外出抑制を実施したため、さまざまな産業で需要が減少し、
多くの産業分野に大打撃を与える未曽有の事態に陥っています。
パンデミック期では、これまでに遭遇したことの無い感染症の不安と恐怖から
外出の自粛・抑制が求められ、これにより、日常のライフスタイルや
仕事のやり方・進め方もゼロから見直しが求められることになりました。
この記事では、コロナウイルス感染をコントロールしながら
経済活動をおこなうウイズコロナ期から、
ニューノーマルが定着化するアフターコロナ期にかけて、
わたしたちの仕事はどのように変わるかを検証し、将来のビジネスを展望します。
コロナ・パンデミック期の働き方
このたびのコロナ禍では、日本では、
2020年2月下旬に感染者が確認されて以来5月中旬にかけて感染者が急増し、
その後感染者数の増加は落ち着いてきたものの依然として感染拡大状況。
私たちの仕事は、不安と恐怖を克服するとともに、
事業継続が可能な働き方とは何かを試行錯誤しながら求めてきました。
コロナ感染者の対応と職場の衛生環境
社員にコロナ感染が判明した場合の対応として、
感染範囲の早期把握と感染拡大の防止に徹した活動が展開された。
感染が確認された社員の勤務先や訪問先の衛生環境改善と、
その社員の家族、同僚や取引先の関係者などの健康状態を確認し、
コロナ感染経路の早期把握と感染拡大防止のための対応
(一定期間の自宅待機、保健所と連携した感染防止策等)を実践された。
ソーシャルディスタンスの徹底
通勤経路、オフィス内、パブリックスペースなどでは
人と人との距離を2メートル以上空けることを基本とした
ソーシャルディスタンスの確保が徹底された。
また、面接・面談など対面で行われる仕事をできるだけ避け、
避けられない場合にはアクリル板の衝立やビニールカーテンの
設置による飛沫防止策が講じられた。
さらに、密集、密接、密閉を防ぐ「ノー3密」を基本として
イベントや研修活動など大人数が集う活動は自粛となった。
通勤・出社を前提とした働き方の見直し
日本政府からの要請を踏まえ、出社しなければこなせない職種や職務では
ラッシュアワーを避けて出勤する「時差出勤」と、
在宅で仕事をこなす「リモートワーク」の導入が推奨された。
その他、職場の人たちが同じ場所に集まることを避けるため、
オフィスを分散して勤務させる「サテライト勤務」を
導入するケースもみられるようになった。
ウイズコロナ期に求められる働き方
新型コロナウイルスの世界的規模の感染拡大により、
世界各国で外出自粛・抑制策が講じられたため、
販売、生産、サプライチェーンにまで需要が激減し、
自動車、航空、船舶等の輸送機器、物流、小売など幅広い産業分野で
大打撃を受ける未曽有の事態に陥っています。
2020年7月1日現在、日本では緊急事態宣言が解除されてもなお、
日々新たな感染確認が続いています。
これに対して日本政府は、これからは「ウイズコロナ期」として、
感染リスクをコントロールしながら社会経済活動のレベルを引き上げることを目指し、
『3密』回避の新しい生活様式の定着と業種毎のガイドラインに基づく
事業活動の徹底を基本方針としています。
「ウイズコロナ」とは何か?
まず、「ウイズコロナ」という言葉の意味ですが、
新型コロナウイルス流行を踏まえて、
このウイルスとどのように共存・共生していくかという価値観を表わしています。
コロナウイルスが世界中に感染拡大し、
これによって医療体制が崩壊の危機にさらされ、
政治、経済、文化といった人間社会のあらゆる面で機能停止がもたらされた
「コロナ禍によるパンデミック期」に続くのが「ウイズコロナ期」。
「ウイズコロナ期」とは、パンデミック期からはじまり、
ワクチンや特効薬などでコロナウイルスをコントロールできる手段を
獲得するまでの期間であり、コロナウイルスと共存・共生をしながら、
人間社会の社会経済活動を活性化させる時期となる。
ウイズコロナ期の「ニューノーマル」
最近、頻繁に耳にする「ニューノーマル」。
「ニューノーマル」とは、新しい常態”のことで、
“新しい常識や価値観が定着化した状態”という意味。
すでにウイズコロナ期に突入している社会においては、
コロナウイルスをコントロールする手段を追求しながら
社会経済活動の活性化を図っていかねばなりませんが、
そのためには、私たちの日常生活や
働き方においてもイノベーション(変革)が求められる。
ウイズコロナ期においては、さまざまな局面でニューノーマルが出現します。
ウイズコロナ期の働き方のニューノーマル
ウイズコロナ期では、オフィスに出社して働く出社勤務から、
自宅で働く在宅勤務へのシフトが促進され、
「リモートワーク」が働き方のスタンダードとなっていきます。
これに伴い、事務用機器・通信機器のポータブル化と
オフィスのフリースペース化が促進されます。
ノートパソコンとポータブルWIFIの普及が進み、
企業の基幹業務ではさらなるシステム化、書類や資料のペーパーレス化が促進されていきます。
また、多くの企業のオフィスでは
一人ひとりに座席を割当てた座席配置が一般的ですが、
ウイズコロナ期では、職場のどこでも仕事ができる
フリーアドレスを標準としたオフィスが普及していきます。
そして、職場のみならず、会議室、研修室、休憩スペースの
どこでも仕事ができるフリーアドレス化が促進され、
オフィス内のどこでも仕事ができる「フリースペース化」が
定着化していくものと見込まれます。
フリースペース化の推進は、オフィス内のソーシャルディスタンスを
維持しながら進められることになるため、
相応のオフィススペースの確保の必要があります。
もし、オフィススペースを十分に確保できない場合は、
アクリル板の衝立やビニールカーテンなどを適宜設置した
飛沫感染防止策を講じることになります。
さらに、手の届く所にアルコール消毒液、
除菌用スプレーやウェットティッシュが常置され、
仕事が終わった後には使用したデスク、テーブルなどを
清掃・消毒をおこなうクリーンデスクも励行され、
オフィスでは「安全衛生対策の強化」が浸透していきます。
このようにウイズコロナ期では、「リモートワーク」が働き方のスタンダードとなり、
「フリースペース化」と「安全衛生対策の強化」が浸透したオフィスが出現し、
これがウイズコロナ期の働き方のニューノーマルを構成することになります。
新しい働き方のストレス対策
一方、テレワークの浸透で、面と向かって人と接する機会が減少し、
これによって疎外感や孤立感に苛まれ、今までに感じたことの無い
不安や寂しさに駆られる人が増えています。
オンラインでのコミュニケーションは、対面によるものと比べ、
身ぶりなどの非言語的な情報量が減るため、
相手と場を共有することで生まれる安心感も得にくくなり、
そのためにストレスを感じやすくなります。
さらに、広々とした空間と、空調設備が完備した快適なオフィスと異なり、
自宅では、近隣騒音に悩まされたり、暑さ・寒さ対策が不十分であったり、
室内空間が狭く圧迫を感じたりと、
在宅勤務ならではのストレスを感じることもあるでしょう。
このほか、毎日多数送られてくるメールやチャットによるメッセージに
ストレスを感じる人も多くなっています。
このような新しい働き方の悩みや困り事、メンタル不調などに対して、
専門の相談窓口の整備や、就業環境改善に向けた制度の拡充が求められ、
これもまた、ウイズコロナの働き方のニューノーマルとなることでしょう。
(参考:日経電子版 2020/5/29「オンライン疲れ」投稿80万件 在宅生活に悩み日経新聞電子版 2020/5/29 10:37「オンライン疲れ」投稿80万件 在宅生活に悩み)
アフターコロナ期の展望
ウイズコロナ期にもたらされるニューノーマルは、
働き方、家庭、学習環境など私たちの日常の隅々にまで影響を与え、
ワクチンや特効薬によりコロナをコントロール可能になる
アフターコロナ期のスタンダードになっていくことでしょう。
ここでは、アフターコロナ期におけるニューノーマルに適応した働き方として
「クロスワーク」という考えを紹介します。
「アフターコロナ」とは?
「アフターコロナ」とは、人間社会がコロナウイルスを
コントロールできるようになった状態を示します。
また、ウイズコロナ期がパンデミックの発生に怯え続けた期間であるのに対し、
「アフターコロナ期」とは、コロナウイルスを抑制するワクチンや特効薬などが開発され、
人間社会がコロナウイルスを克服できるようになった時代になります。
アフターコロナ期の「ニューノーマル」
アフターコロナ期では、私たちの日常生活や働き方において
多様で柔軟なスタイルが取り込まれていくとともに、
人間社会のさまざまな側面でイノベーションが生じ、
今までにない新たなスタンダードが誕生してきます。
そして、新たに生み出されたスタンダードが、ウイズコロナ期のニューノーマルに加わり、
より進化した新たなニューノーマルとして、人間社会の隅々に浸透し、定着していくことでしょう。
アフターコロナ期の働き方のニューノーマル
アフターコロナ期では、「リモートワーク」という働き方、
「フリースペース化」と「安全衛生対策の強化」が進んだオフィスという
ウイズコロナ期のニューノーマルを承継し、
これに時代の要請を受けて生まれた新たなファクターが加わっていきます。
それは、職場環境に時間的・空間的な影響を与えるとともに、
働き手も正規・非正規の別、日本人・外国人の別、
さらには老若男女の別も問わない多様で柔軟な働き方。
アフターコロナ期では、リモートワーク技術のさらなる向上により、
在宅勤務の定着化が進むとともに、自宅や外出先に近いオフィスで勤務するなど、
その時の事情に応じて選択できるサテライトオフィスもより一層浸透するでしょう。
実際に、不動産仲介会社では、リモートワークの普及によっても、
オフィスの増床を取りやめても、現状レベルのオフィス面積を維持する企業は
少なくないと予想しています。
その理由は、コロナ感染の拡大などの非常時い事業継続を重視する企業は、
会議室やミーティングスペースなどオフィス内の
人と人の「間隔」を広げることを重視するため、
テレワークが普及しても、フロアスペースの削減にはつながらないからとみています。
アフターコロナ期においては、働き方改革のさらなる浸透もあり、
このようなオフィスのあり方が定着化していくものとみられます。
(参考:日経電子版 2020/6/2 テレワーク普及でオフィス再構築 人をつなぐ分散型へ )
ニューノーマルに適応した働き方「クロスワーク」
このように、テレワーク技術のさらなる向上と
多様で柔軟なオフィス戦略の推進によって実現される
ニューノーマルに適応した働き方を、ここでは「クロスワーク」と呼びたいと思います。
「クロスワーク」とは、多種多様な人々が
一緒になって働く環境を意味することがありますが、
スポーツのラクロスではスティックワークの意味があり、
それは「どんな体勢でも、自由にボールを正確にリリースすることができる技術」
の追及が期待されています。
つまり、「クロスワーク」とは、どんな体勢(態勢)でも
自由にボール(仕事)をコントロールして、正確にリリースする(成果を出す)世界であり、
これがアフターコロナ期のスタンダードな働き方になっていくものと見込まれています。
「クロスワーク」における多種多様な働き方と働き手
アフターコロナ期の働き方のスタンダードとしての「クロスワーク」は、
時間的かつ空間的な制約を受けることなく、個人が多種多様な働き方を自ら選び、
そして成果を発揮していく働き方。
<アフターコロナ期のクロスワーク業務形態>
- 出社勤務と在宅勤務が複合的に取り入れられた勤務形態
- メインオフィスとサテライトオフィスによって実現されるスプリット勤務
- ラッシュアワーを避けて出社する時差出勤体制
- 島形態の固定席からフリーアドレスによる自由席が基本のオフィスへ
- 仕事の内製化の減少と仕事の外注化の促進
- 兼業・副業の増加
出社勤務と在宅勤務が複合的に取り入れられた勤務形態
ウイズコロナ期には、外出することに恐怖を感じる人が多くいたこと、
子育て世帯では在宅勤務を強く希望する声も強かったことから、
出社勤務と在宅勤務が複合的に取り入れられた勤務形態が平準化しました。
アフターコロナ期では、ワークライフバランスの浸透とともに、
この勤務形態がさらに定着化していきます。
メインオフィスとサテライトオフィスによって実現されるスプリット勤務
ウイズコロナ期には、特定の部署でクラスター感染が発生すると
その部署の機能が停止するため、オフィスを複数用意して、
一つの部署・職場を二つ以上に分散化するサテライト勤務の導入が普及しました。
アフターコロナ期では、コロナに限らず、コロナ以外の感染症の発生の場合に備え、
BCPの一環としてサテライト勤務の導入も進むものとみられます。
ラッシュアワーを避けて出社する時差出勤体制
ウイズコロナ期には、ラッシュアワーの交通機関利用に対する警戒から、
時差出勤が普及しました。
アフターコロナ期では、働きやすい時間に出社して仕事をするという
ワークライフバランスの要請から、時差出勤体制もスタンダードになっていくことでしょう。
島形態の固定席からフリーアドレスによる自由席が基本のオフィスへ
ウイズコロナ期以前は、オフィスと言えば島形態の固定席が一般的でした。
アフターコロナ期では、いつでもどこでも仕事ができるクロスワークが主流となり、
島形態の固定席が減少し、フリーアドレスによって
どの場所でも仕事ができるオフィス環境が一般化していきます。
仕事の内製化の減少と仕事の外注化の促進
ウイズコロナ期には、在宅勤務の促進によりオフィスにおける
ルーティン業務の一部が停滞したため、業務の外注化が進みました。
アフターコロナ期では、在宅勤務がスタンダードとなるため、
オフィスにおけるルーティン業務についても内製化すべき仕事と
外注に回すべき仕事の区分けが進み、
ルーティン業務の外注化が促進されていくことでしょう。
兼業・副業の増加
ウイズコロナ期には、コロナ禍による休業による収入減を
副業で補おうとする人が増えており、兼業・副業を解禁する企業も増えてきました。
実際に、2020年5月末には、クラウドソーシングの大手仲介事業者に登録する人の数も、
700万人を超え、在宅勤務による隙間時間を副業に当てたいと考える人も増えています。
アフターコロナ期では、在宅勤務がさらに広がりを増すため、
多くの会社員にとって隙間時間をつかった副業が容易になり、
これを許す企業も増えるため、兼業・副業のさらなる促進が見込まれています。
(参考:日本経済新聞電子版 2020年6月23日 日本のギグワーカー100万人増 20年上半期 )
このように、アフターコロナ期では、働き方が、
時間的・空間的にも多様化するとともに、働き手の属性としても、
正規・非正規、日本人・外国人、老若男女の別を問わない多様性が浸透し、
クロスワークが促進されていくことが予想されます。
「クロスワーク」の普及とニュービジネス
クロスワークが普及し定着化するためには、次のような課題があります。
- テレワークの実践を支えるテレコミュニケーション技術の向上
- さまざまな場所からのアクセスを可能とする情報セキュリティ体制
- ペーパーレス化を実現する電子データ・電子コンテンツ化の普及・促進
- テレワーク下における情報収集、調査活動などへの対応
- テレワーク下における教育・研修活動への対応
- 在宅勤務に伴う外出機会の減少によって生じる運動不足やストレスなどの解消
これらの課題の中に、新たなイノベーションの機会が潜んでおり、
これらの課題の克服のために、さまざまな需要が創出されていくことでしょう。
このようにクロスワークの普及・促進とは、
アフターコロナ期の社会・経済・文化など多岐にわたって、
さまざまなニュービジネス創造の機会をもたらす可能性も期待できます。
既に、自宅でのパーソナルスペースの確保や雑音を遮断して
集中力を高めるためのグッズが多数開発され注目を集めてり、
これからも、在宅勤務やテレワークを意識した
さまざまな便利グッズが登場してくることでしょう。
(参考:日経電子版 2020/6/30 テレワークの集中力高める 雑音・照明悩み解決グッズ)
コロナと共生するという社会
私たちは、既に到来しているウイズコロナ期に、
コロナと上手に共生・共存する術を学び、コロナをコントロールする状態を築き、
アフターコロナ期にはその経験からニュービジネスを生み出し、
将来の日本の繁栄を実現するコアビジネスに育成していく必要があります。
そのためには、私たち一人ひとりが、まずは当面のコロナ禍を乗り越えていくため、
前向きに歩んでいくことが何よりも大切なのではないでしょうか。
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