すぐにでも実践したい「アサーティブコミュニケーション」のやり方

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Masafumi F

さまざまな業界の上場企業で法律文書や開示資料、広報誌等の作成に携わった経験と、AWAI(アメリカのライターを養成する法人)にて修得したライティングスキルをもってコピーライターとして活動しています。


職場や集団の中で発生するハラスメントは、

ほとんどが「コミュニケーションの取り方」に問題があります。

そして、ハラスメントを招かないコミュニケーション・スキルとして

注目されているのが、「アサーティブ」の概念を取り入れた

「アサーティブコミュニケーション」です。

 

今回は、相手に配慮しながら自分の気持ちを正当に主張しようという

「アサーティブコミュニケーション」の具体的な実践方法をご紹介します。

 

「アサーティブ」なコミュニケーションとは?

ハラスメントを起こさずに、人間関係を円滑にすることができる

コミュニケーション手法とは、どんなものでしょうか?

 

それは、「攻撃的」でもなく、「受身的」でもなく、

そして「作為的」でもないコミュニケーションのタイプ、

メンバーに納得感を持ってもらうことを目的とした

「アサーティブ」なコミュニケーションです。

 

「アサーティブ」とは、「自分も他人も尊重した自己表現」のこと。

自分が言いたいこと、伝えたいことを、メンバーに正しく理解してもらい、

そして、納得して受け入れてもらうことを意味しています。

 

この「アサーティブ」という概念を取り入れたコミュニケーションを

実践することで、自分の意見や考えをしっかりと相手に伝えることができ、

ストレスの無い良好な人間関係を築けるようになります。

 

「アサーティブ」の4つの柱

「アサーティブ」なコミュニケーションを修得するには、

まず下記の4つの柱からなる「アサーティブ」という概念を理解することが

大切です。

  1. 誠実
  2. 対等
  3. 率直
  4. 自己責任

 

①誠実

「誠実」とは、自分にも相手にも、ともに誠実であることを意味します。

相手の意見や考えに納得できず、感情としては反論したいのに

それを押し殺して表面的に相手に同調すると、

「受身的」コミュニケーションになってしまいます。

 

まず、自分自身に対して自分が何を考えているのか、

どう感じているのかを誠実に問いかけ、同時に、

相手に対しても嘘・偽りのない態度で接してみるようにしましょう。

 

②対等

「対等」とは、自分と相手との間に、上司と部下、

リーダーとメンバーのような上下関係があっても、

人間として対等な関係で相手と接することを意味します。

 

とかく上司と部下の間で起きるハラスメントは、

「人間として対等」であるという原則を無視することから発生します。

相手を見下すことなく、一方で、必要以上に卑下することもなく、

自分のことも相手のことも尊重した対等な態度をとるようにしましょう。

 

③率直

「率直」とは、相手に対して率直(素直)に向き合うことを意味します。

自分の意見を主張するとき、「みんながこう言っています」、

「上司がこう考えています」、「リーダーはこうしています」というように、

第三者を巻き込み、その第三者を介して保身に走ると

「作為的」コミュニケーションになってしまいます。

 

相手の顔を正面に見て「私はこう思います」、

「私の考えはこうです」と率直に自分の意見や考えを

伝えるようにしましょう。

 

④自己責任

「自己責任」とは、自分のコミュニケーションによって生じた結果は、

自分自身が引き受けるということを意味します。

また、相手とのコミュニケーションの半分は、自分にも責任がある

という意味でもあります。

 

人とコミュニケーションを取るということは、相手に何らかの影響を

与えるものなので、その結果に責任を負わねばならないことを意識しながら、

自分の主張を伝え、また、相手の主張を理解する心構えが大切です。

 

アサーティブコミュニケーションの実践方法

ここから、「アサーティブコミュニケーション」の実践方法をご紹介します。

「アサーティブコミュニケーション」の修得のためには、

次の6つのスキルを身に付ける必要があります。

  1. 仕事そのものについての「大前提」を共有する
  2. 指示内容についての「捉え方」を揃える
  3. 指示に基づき取り組む「意義」を理解させる
  4. 指示を出す上長(自分)に対する「共感」を得る
  5. 指示内容の「重要イシュー」を考えさせる
  6. 指示に基づく成果に応じて正しく「評価」を行う

 

仕事そのものについての「大前提」を共有する

まず、組織やリーダーの方針や指示を明確に理解してもらい、

納得感を持って受け入れてもらうために、

絶対にズレを起こしてならない大前提に「仕事の捉え方」があります。

 

それは、「仕事とは『完結』させてはじめて成立するもので、

プロセスだけでは仕事とみなされない」ということです。

このことは会社に限らず、さまざまな集団社会やコミュニティで

あてはまる大前提です。

 

仮に、「プロセスを仕事」と捉えてしまうと、

その人は仕事をした気になってしまい、

自分は役割をしっかり果たしているという勘違いを起こしやすくなり、

さまざまなすれ違いや、期待外れな結果が訪れることになります。

 

こうした事態を招く原因は、相手の理解力の問題ではなく、

この大前提を自分と相手の共通認識として理解させていないからです。

リーダーは、仕事に関する「大前提」を共通認識としてメンバーに伝え、

仕事を最後まで完結させるように誘導していかねばなりません。

その努力を惜しむと、仕事をした気になっている人の意識を変えることは

難しくなります。

 

指示内容についての「捉え方」を揃える

メンバーに頼んだ仕事について、何度も確認しないと動いてくれなかったり、

提出された仕事の中身がいつも中途半端だったり、

いつも何かトラブルが生じて予定どおりにいかなかったり…

といった残念な結果(アウトプットの期待外れ)に振り回されていませんか?

 

「アウトプットの期待外れ」が起きるのは、自分とメンバーとの間に、

指示した内容の「捉え方(理解の仕方)」にズレがあるからです。

自分が指示・依頼した内容が、相手に自分の期待通りに

理解してもらえていると思い込むと、

後々、期待外れな残念な現象に振り回されます。

 

そんな自分と相手の認識のズレを防ぐには、「正しい指示・依頼」が大切。

そのポイントは次の3つです。

  1. 期日:いつが「締切」なのか
  2. 状態:どんな「状態」で提出してもらうか
  3. 確認:そこで「誰の承認」をもらうか

 

まず、「期日」について、締切があいまいであると、

メンバーはラクを求めて先送りをしたがりますが、

締切を明確にすると、集中して仕事をしようという意識が高まります。

 

次に、「状態」について、どんな状態で提出・報告してもらうかを明確にすると、」

アウトプットの期待外れ」を防ぎ、余計なトラブルの発生を防ぎます。

 

最後の「確認」については、誰の確認・承認をもらうか不明確なままであると、

メンバーに勝手な判断や命令違反を生み出すことにつながりますが、

誰の確認・承認をもらうか明確にし、それを習慣化すると、

緊張感をもって指示通りの仕事を遂行するクセが生まれます。

 

指示に基づき取り組む「意義」を理解させる

「正しい指示・依頼」を出すことは重要ですが、

その指示・依頼に納得できないとメンバーは行動に移せません。

指示・依頼に対して行動をおこしてもらうためには、

その指示・依頼にしたがう必然性をメンバーに理解させる必要があります。

そのためのポイントは次の3つです。

  1. その指示・依頼の実行がもつ意義を説明し理解させる
  2. その指示・依頼の実行がもたらす本人の損得を伝える
  3. 本人の誇りやアイデンティティに訴える

 

まず、その指示・依頼の内容が、会社や集団の戦略と

どう関係しているのかを説明し、そのうえで、

その指示・依頼を実行することが会社や集団にどんな貢献をもたらすかを

理解してもらいます。

 

次に、その指示・依頼の内容を実行することが、

自分自身にどんなメリットがあるのか、

それをしないとどんなデメリットがあるかを伝えます。

それにより、その指示・依頼の内容が他人事ではなく、

自分事として理解できるようになります。

 

最後に、メンバーに対する会社や集団の期待を伝え、

誇りに訴えかけたり、本人のアイデンティティ(自分らしさ)を理解して、

それを尊重した仕事を与えたりして、メンバーに前向きに行動に移して

もらうようにします。

 

こうした取り組みによって、指示・依頼の内容を自分事として捉えてもらい、

当事者意識をもって仕事にあたってもらうようにします。

 

指示を出す上長(自分)に対する「共感」を得る

尊敬も共感もできない上司・リーダーからの指示には、納得できないし、

従いたくもないと思うのが人情。

メンバーにネガティブな感情があると、素直に聞き入れてくれませんが、

メンバーにポジティブな感情があれば、素直に聞き入れて、

パフォーマンスを発揮してくれます。

 

そのための取り組みとして、“良い人アピール”と“味方アピール”を

習慣化させることが有効。

常日頃から、メンバーの仕事振りに対して、ねぎらいの言葉や感謝の気持ちを

素直に伝えるのがとても効果的です(いい人アピール)。

 

また、「何か困ったことがあれば相談して」とか、

「仕事の達成に出来る限り協力するよ」といった言葉を掛けることも

効果があります(味方アピール)。

 

指示内容の「重要ポイント」を考えさせる

正しい指示・依頼を出して、それに取り組む意義を説明しても、

それだけではダメです。

適宜をフォローしないと、軌道がズレたり、

計画通りに事が運ばなくなったりして、

期待通りに仕事が完結しなくなります。

 

そのときのフォローの仕方として、指示・依頼した内容について

「重要ポイント」を考えさせるような問いかけをするのが効果的です。

  • 想定される成功の阻害要因は何か?
  • KPI(重要業績評価指標)は何か?
  • 仕事のマイルストーンは何か? 

 

仕事の重要ポイントを考えてもらう習慣がつくと、

メンバーが自らの課題を見つけ、自らの力で解決策を考え、

自らそれを解決していく行動につながります。

そして、メンバー全員にそのような意識が定着すると、

自律的に行動する人たちが増え、いつしか「自律的な組織・集団」を

築くことにつながり、組織・集団の活性化が期待できます。

 

指示に基づき出した成果には、正当な「評価」をもって報いる

指示・依頼した内容に対する成果については、正当に評価するのが大切。

その際、上司やリーダーが下した評価について、

メンバーが納得できるものでなくてはなりません。

 

メンバーの納得感を得られる評価方法とは、メンバーに十分「内省(振り返り)」

させたうえでくだす評価です。

評価の手順は次のとおりです。

  • ステップ1:相手に仕事に関するパフォーマンスを振り返らせる
  • ステップ2:振り返りの内容について上司としての「見解」を伝える
  • ステップ3:上司としての「総評」を述べる
  • ステップ4:振り返りの結果、今後に「活かせるもの」があるか確認する

 

このステップを踏めば、上司やリーダーの一方的な評価にはなりませんから、

メンバーの納得度が高まりますし、今後につながる評価になっていくのです。

 

相手を尊重する姿勢が大切

「アサーティブコミュニケーション」は、相手を尊重しながら

自分の意思や考えを相手に理解してもらうコミュニケーション手法です。

これを上手く活用できれば、組織のコミュニケーションが円滑になり、

そしてハラスメントの発生防止が期待されるだけではなく、

仕事も組織も活性化させることができます。

さまざまな組織や集団生活におけるコミュニケーションを円滑にするため、

アサーティブコミュニケーションを活用してみましょう。

 

<参考文献>
アサーティブとは?必須のスキル・アサーティブコミュニケーションで快適な人間関係を目指そう
STUDY HUCKER) 

あれはどうなった?許してはいけない部下の返事とはBIGLOBEニュース:講師 楠本和矢氏)

部下に“納得”してもらえない上司がやるべきことJBpress2020.11.28:講師 楠本和矢氏)

 

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