東京からぶらっといけるローカル線の旅をご紹介。
今回はかつて日本の物流を支えた2つの歴史的な道を歩く旅をご紹介します。
まず一つ目は「箱根旧東海道」。
江戸から京都まで大動脈で、今も当時のままの石畳や杉並木が残り、
遊歩道として整備された「天下の険」と歌われた山道を、
タイムスリップしたような江戸時代の旅を体験できます。
二つ目は「碓氷峠アプトの道」。
東京と日本海側とを結んだ鉄道跡。
最大66.7パール(1000m進行時に66.7mの高低差がある状態)、
標高差553mの急勾配を越える、群馬長野県境の「碓氷峠」がネックになり、
機関車とレールに歯車を嚙み合わせて登る「アプト式」という方式で、
明治26年(1893年)難工事の末、開通しました。
今はその廃線跡は遊歩道として整備され、日本の近代化に想い馳せながら
散策することができます。
箱根旧街道を往く
箱根旧街道ハイキングの見どころ
(富士山と芦ノ湖)
このコースは宿場町として栄えた、「畑宿」からスタート。
約3km、1時間かけて、江戸時代から多くの旅人が旅の疲れを癒した、
次のポイントである甘酒茶屋へ。
そして最後は、約4kmをハイキングし、
石畳や杉並木を抜け最終目的地である箱根関所へ到着というコース。
全長7km所要時間2時間のコースです。
旅のスタート地点畑宿は、宿場町として栄え、
箱根の伝統工芸寄木細工の工房が並びます。
この町はずれに一里塚が残りハイカーも、箱根越えの旅の気分が盛り上がります。
畑宿の町を出ると、昔から一番の難所と言われた七曲りに差し掛かり、
いかにも急斜面であるかのような猿滑坂を越え追込坂を登ると甘酒茶屋に着きます。
甘酒茶屋は難所を登り切った多くの旅人が休憩した茶屋です。
江戸時代と同じ製法で作られている甘酒と力餅で一息つきましょう。
またここは忠臣蔵で討ち入りの為に上京する赤穂浪士、神崎与五郎が、
悪質な馬子とトラブルになり、討ち入り前に事を荒立てない為、
武士のプライドを捨て、馬子に土下座して詫びるシーンで知られた場所です。
また隣接して無料資料館もあります。
甘酒茶屋を出ると国の史跡に指定される石畳が多く残る、
このコースの一番の見どころに差し掛かります。
石畳を登ったあと、最後は15分程下ると、写真のような富士山と芦ノ湖が迎えてくれます。
乗物を使ってたどり着いた時とは違った充実感を味わえるはずです。
そしてフィナーレは杉並木を歩き箱根関所に着きます。
ハイカーは一息ですが、江戸の旅人はこれから厳しい取り調べが待っていました。
そんな様子を人形や資料を使って再現しています。
ひと休みしたら関所の見学もしてみましょう。
箱根旧街道ハイキングのアドバイス
(関所と芦ノ湖)
畑宿へのアクセスは、新宿駅から小田急線ロマンスカーで80分の
箱根湯本駅から箱根登山バス箱根旧街道線に乗車し15分程。
9時台から16時台まで概ね30分に1本の間隔で運行しています。
このバス路線は甘酒茶屋も経由しますので、
畑宿~甘酒茶屋間の急勾配を歩くのに自信がない方や、
子ども連れは甘酒茶屋~箱根関所を1時間程歩くのが手頃です。
また、この路線のフリーの乗車券「箱根旧街道・1号線きっぷ」、
あるいはそれに加え芦ノ湖遊覧船やロープウエイ等箱根の乗物も楽しめる
「箱根フリーパス」を購入するとお得です。
途中で疲れても無理せずバス利用ができます。
箱根関所等の施設も割引で入場できます。
芦ノ湖畔は箱根有数の観光スポットですので、ハイキングの汗を流せる施設も揃っています
碓氷峠アプトの道を往く
碓氷峠アプトの道ハイキングの見どころ
(丸山変電所レンガ造りの建物)
このコースはJR信越本線横川駅前の碓氷峠鉄道文化むらからスタート。
碓氷関所跡や旧丸山変電所を見学しながら、約3km50分で日帰り温泉施設の峠の湯へ
温泉の楽しみは帰路にとっておき、ここからが廃線ハイキングの本番。
約2km45分で、このコースのハイライトめがね橋へ。
さらに約1km25分で、終着点の旧熊の平駅に到着します。
全長約6km強、約2時間のハイキングコースです。
基本は往復型のコースですので、帰路の時間を取る必要もあります。
スタートは碓氷峠鉄道文化むら。
ここで碓氷峠の鉄道の歴史を学んでから、ハイキングに出かけると、
一層充実したハイキングが楽しめるでしょう。
またここでは1日講習が必要ですが、かつてこの急勾配区間を補助機関車として走った
電気機関車の運転体験もできます。
前半の鉄道文化むら~峠の湯見どころは、碓氷関所跡と旧丸山変電所です。
特に旧丸山変電所は国の重要文化財に指定されている、
明治45年(1912年)にこの区間が電化された際に、建設されたレンガ造りの建物です。
現在の山手線の一部区間の電化が明治42年(1909年)ですから、
明治45年(1912年)の電化はかなり早い時期のものでした。
これはスピードアップということもありますが、
明治26年(1893年)に開通したもの、26ものトンネルがあり蒸気機関車では、
乗客、乗員とも煙に苦しめられたということから電化が急がれました。
後半の峠の湯からの部分は、明治時代に開通した廃線部分を歩きます。
実際にかつては列車が走った、トンネルをくぐり、橋を渡り、廃駅を巡ります。
廃線を勝手に歩くのは、危険でもあり、法に触れますので、
整備された「アプトの道」では珍しい体験ができます。
そして峠の湯から約2km 45分程で、このコースのハイライトめがね橋に着きます。
レンガで造られた高さは31m、長さは91mを誇るアーチが4つ連なった美しい橋で、
ここも国の重要文化財です。
さらに約1km25分進んだ旧熊の平駅がこのハイキングコースの終点になります。
この駅は単線時代、上下線の行き違い場所として使われました。
静かな山間の廃駅は、日本の近代化、高度成長を支え、大きな役目を終え、
静かに山に帰っていく雰囲気さえします。
碓氷峠アプトの道ハイキングのアドバイス
(遊歩道の廃線跡トンネル)
碓氷峠鉄道文化むらへのアクセスは、
東京駅(上越・北陸新幹線50分)、高崎駅(信越線35分)横川駅徒歩3分
高崎→横川は本数が少ないので、出発前に確認してください。
車の場合は、練馬IC(関越、上信道80分)松井田妙義IC(一般道10分)
ハイキングコースの前半の鉄道文化むら~峠の湯は、
3月~11月の土日祝日(8月は毎日)トロッコ列車も走りますので、
全行程歩くと往復4時間程かかりますので、体力に合わせて利用してみましょう。
峠の湯は日帰り入浴施設で、ハイキング帰りに一汗流していくことができます。
レストランでは、機関車の付け替え作業時間中に多くの人が購入した、
横川駅の名物駅弁「峠の釜めし」を味わうこともできます。
鶏肉、椎茸、筍等が入ったしょうゆ味の炊き込みご飯です。
100台分の駐車場もありますので、マイカー利用ならここを起点に散策することも可能です
隣には宿泊可能なコテージもあります。
また帰路は国道18号線に出て、宿場町の雰囲気を残す坂本宿を見ながら、
横川駅に下るのも一興です。
東京から気軽に行ける歴史ある道
今回ご紹介した両コース共、都心から日帰りで、歴史に触れ、
自然あふれる遊歩道のハイキング、そして温泉を楽しめます。
ハイキングの難易度も、体力に合わせて歩行距離を変えれば、
初心者や子ども連れでも楽しめるコースです。
ただし、履物はサンダル、ハイヒールは厳禁です。
特に箱根の石畳は滑りやすい所もありますので、
ソールの厚い、滑りにくい靴で、歩きましょう。
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