新型コロナウイルスの影響で、経済活動の停止を余儀なくされ、様々な業種で打撃を受ける中で、
改めて注目されているクラウドファンディング。
スマホでカンタンに寄付することができ、リターンの形も様々。
昨今ではただ寄付をするだけではなく、より深いつながりを得られる、
新たな寄付の形である様々なクラウンドファンディングを紹介します。
これまでの寄付
寄付は、世界中で行われている慈善的な行為です。
ただ、国や地域によって浸透度は大きく違っており、
欧米やイスラム諸国、ミャンマーなど宗教の影響力が強い国ほど盛んなようです。
(「世界寄付指数 2018」CAF World Giving Index 2018 https://www.cafonline.org/about-us/publications/2018-publications/caf-world-giving-index-2018)
たとえばアメリカでは2008年の年間寄付総額は約36兆円でした。
一方日本はというと、2010年のデータではアメリカのわずか2.4%の約8,800憶円。
(内閣府 NPOホームページ:https://www.npo-homepage.go.jp/kifu/kifu-shirou/kifu-hikaku)
税制や社会保険制度などさまざまな違いはありますが、それでも大きな差です。
「世界寄付指数」2018年版でも日本の寄付指数は144か国中99位と下位クラス。
日本は国際的には寄付が低調な国なのです。
さて、寄付というと具体的にどんなイメージを思い浮かべるでしょうか。
日本人の多くがイメージするのは2つの対極的な姿ではないかと思います。
一つは、駅前や街頭、学校、職場などで行われる草の根的な募金の姿。
赤い羽根の共同募金やユニセフ募金、テレビのチャリティー番組もその一例ですね。
「ああ今年も募金やってるんだ…」と風景を見るくらいの意識しかなかった
という人も多いのではないでしょうか。
もう一つは、大企業の創業者など資産家による巨額な社会貢献活動というイメージ。
松下幸之助やビル・ゲイツ、ノーベル。
多くの資産家は財団をつくるなどして組織的・持続的に寄付を行ってきました。
また、ユニクロの柳井会長による京大への100億円寄付は記憶に新しいところです。
庶民にはとても手の届かない、ごく一部の人だけが行うことのできる特別な形の寄付。
いずれにせよ多くの日本人にとって、寄付と言われてもどこか縁遠い存在だったのではないでしょうか。
しかし、寄付が低調だったこの日本にも新たなムーブメントが起きているのです。
コロナ禍で活用される寄付
今回のコロナ禍で直接的な大打撃を受けたのが飲食業や観光業。
外出自粛や移動制限は、人々の移動や交流で成り立っている
これらの業種にとっては致命的な措置でした。
新型コロナ関連の企業倒産件数は「飲食店」「旅館・ホテル」が上位2つを占めており、
どちらの業種もかつてない深刻な状況にあります。
(帝国データバンク:https://www.tdb.co.jp/tosan/covid19/index.html)
そこで各地の事業者や自治体、商工会などが打ち出した対策の一つが、
いわゆる「未来券」の発行でした。
「将来の飲食や宿泊のサービスを前売り券という形で販売し、いま困難な状況にある事業者を救おう」
という未来券。
たとえば、相模原市の飲食店オーナーなどからなるプロジェクトチームは、
2020年5月、クラウドファンディングサイトのCAMPFIRE上で
「ミラチケ サガミハラ」と銘打った未来券を販売 。(https://camp-fire.jp/projects/view/260330)
1か月後には目標の300万円を大きく上回る545万円の販売を達成しプロジェクトを完了させています。
この取り組みで注目すべきなのは、通常の前売り食事券のほかに、
食事を伴わずただ純粋に支援を行うというタイプのチケットも販売したこと。
その結果、実に購入者のうち約15%が「寄付」タイプを選んだのです。
同様の取り組みを全国規模で行ったのが、
日本商工会議所とクラウドファンディング企業のREADYFORによる
「みらい飯」プロジェクトです。(https://readyfor.jp/pp/miraimeshi)
全国各地の未来券をREADYFOR上で一覧できるようにし、
好きな地域を選んでオンライン上で購入・支援してもらおうという取り組みですが、
ここでもミラチケと同じように対価を求めない寄付タイプのチケットが用意されました。
こうしたクラウドファンディングは、飲食業や観光業だけでなく、
音楽・エンタメ業界や理美容業界、医療、福祉などあらゆる分野での
支援・寄付で活用が進んでいます。
たとえば、READYFORでは主に医療分野に対する緊急支援として
「新型コロナウイルス感染症:拡大防止活動基金」を立ち上げ、
わずか55日間で国内クラウドファンディング史上の最高額となる
5億3千万円の調達に成功しました。(https://readyfor.jp/projects/covid19-relief-fund)
また、各世帯に配布された10万円のコロナ給付金を、
医療や教育、福祉、文化スポーツなど真に支援を必要とする分野への寄付に回そうという
「コロナ給付金寄付プロジェクト」があります。
ヤフーやふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」などが共同で立ち上げたプロジェクトで、
2020年6月現在ですでに1億円以上の寄付が集まっています。(https://corona-kifu.jp/)
あたらしい寄付の姿
寄付ポータルサイトのGive Oneが生まれたのは2000年。
当時、「新しい公共」として活躍が期待されていた
NPOを支援するしくみとして脚光を浴びました。
2004年には同種のYahoo!ネット募金も誕生、
「インターネット上で応援したいプロジェクトを選び、その場で寄付できる」
しくみが定着していきました。
ただ、これらのサイトは信頼性を高めるために参加団体に対し
一定のハードルを設けており、誰もが寄付を募ることができるという
オープンな形はとっていませんでした。
そのすそ野を大きく広げたのが、クラウドファンディング。
東日本大震災の2011年、CAMPFIREとREADYFORの
国内2大クラウドファンディングが開業します。
「ある目的を達成するため、その資金援助を
インターネット上で広く賛同者に呼びかけ、獲得する」
というクラウドファンディングは、
中学生でも大歓迎というゆるさを持ったプラットフォームでした。
震災後に人々の間に高まっていたシェア意識や共生意識を取り込み、
スマホの普及と相まってクラウドファンディングの市場規模は
右肩上がりで拡大していきます。
前後してYouTubeやOFUSE、SHOWROOMなどの「投げ銭」や「クリック募金」など、
人々の気持ちを数クリックでお金に変えるネット上のツールも
次々に登場していきました。
そして今日のコロナ禍。スピーディーな支援が必要とされる中、
こうしたオンライン上のツールはあらゆる分野で幅広く活用され、
「クラウド寄付」はかつてない盛り上がりを見せています。
日本において、これまで寄付という舞台の主要プレーヤーは
寄付する側もされる側も大きな組織が中心で、
個人の存在感は薄かったように見えます。
ある意味で一部の特権階級だけによる「貴族制の寄付」がずっと続いていました。
それが今ではサキメシの例にみられるように、
町の小さな商店街の小さな店が声を上げれば、
世の中に反響を呼ぶことができるようになりました。
寄付をしたい・寄付してもらいたいという
それぞれの小さな声たちを直接結び付けることを可能にしたクラウドファンディング。
ITが寄付を「民主化」したのです。
「コミュニティを作る喜び」としての寄付
ITの進化により誰でもいつでも簡単にできるようになった寄付。
しかしそれはあくまでツールにすぎません。
寄付がここまで盛り上がりを見せている一番の原動力は、やはり人々の意識の変化です。
CAMPFIREは2016年、クリエイターの活動支援に特化した
クラウドファンディングサービス「CAMPFIREコミュニティ」をスタートさせました。
これは、期間を限定した「プロジェクト」への支援が中心だった
従来のクラウドファンディングに対し、
クリエイターという「人」に対する継続的な支援に主眼を置いたサービスです。
クリエイターはサイト内に自分の「コミュニティ」を開設、
コンテンツの先行発表や限定販売など支援金額に応じたファンサービスを行い、
コミュニティに参加するファンはクリエイターとの近い距離感や特別感を楽しみながら、
月額500円からの継続的な資金援助=寄付を行います。
こうしたしくみにより、それまで商業ベースに乗らなかったような
ニッチなジャンルのクリエイターでも直接ファンを獲得し、
収入を安定的に確保する道が開けました。
こうした、クリエイターによる資金援助者(=パトロン)の獲得を支援する
「パトロンサービス」が近年人気です。
CAMPFIREコミュニティでは2020年4月末までに2,100件以上のコミュニティが開設され、
のべ61万人の参加者が総額20億円を支援。
( https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000271.000019299.html)
ほかにも国内の「Pixiv FANBOX」や海外の「Patreon」など数々のサイトが登場し、
ジャンルとしての盛り上がりを見せています。
寄付という手段で積極的にコミュニティや社会に参加し、
同じ趣味や価値観を持つ人たちとのつながりも見出せる、
支援者同士のコミュニケーションツールとしても活用されています。
寄付の新たな魅力
現在の寄付は、大きな組織や面倒な手続きを経ることなく、
自分の思いをダイレクトに地域や社会へ伝えることができるツールになりました。
阪神淡路大震災、東日本大震災、そして現在のコロナ禍と
未曾有の危機を立て続けに経験した末に、私たちが発見した新しい姿なのかもしれません。
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