まるで異世界!伊豆大島日本で唯一の「砂漠」を歩く

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こばやしかをる

写真家/クリエイター 写真を撮る・教える 写真家。スマホ、写ルンです~一眼レフまで幅広く指導。写真・カメラ雑誌等にも執筆・寄稿するなど、デザイン制作・企画、プロデュース、ディレクションまでをフィールドとするクリエイターであり、ライターとしても活動中。


東京都には島があるのはご存知でしょうか。

知っていてもまだ行ったことが無いという方も少なくないはず。

 

東京の島は伊豆諸島と呼ばれ、有人島で9島、小笠原諸島2島を含めると11島存在します。

中でも一番本土から近い伊豆大島は椿の島としても国際的に有名で、

島内には約300万本のツバキが自生しており、島内を車でめぐれば

あちこちの道脇で目に見ることができます。

 

海と山の大自然に囲まれた「島」という環境は、東京とは思えないほど。

四季折々を通じ、訪れるたびに出会うもの、感じるものが異なる

伊豆大島の魅力に触れてみませんか。

 

伊豆大島へのアクセス

東京・竹芝桟橋より、高速ジェット船利用で約1時間45分で行くことができます。

大型船さるびあ丸は夜行便(船中泊)で約8時間。

大型船は夜も遅めの時間に出発しますので、お仕事帰りや週末を利用して

気軽に足を運ぶことができます。

週末には横浜・大さん橋にも寄港しますので、そちらからも乗下船が可能です。

 

その他、便によっては久里浜港(神奈川県)、館山港(千葉県)、

熱海港、伊東港、稲取港(静岡県)も季節運航があり、高速ジェット船で約1時間。

船が苦手な方は、調布飛行場から約30分で大島空港へアクセス可能です。

 

どのアクセス方法も天候や季節によって大幅に変更になることがありますので、

運行会社や気象状況を確認しながら予定を組みましょう。

また、ツアーなどもありますのでそちらを利用するのもよいでしょう。

東海汽船株式会社 / 新中央航空株式会社

 

船旅でしか味わえない旅情を満喫しよう

ジェット船なら1時間45分で到着する伊豆大島ですが、

船酔いの心配がなく、初めて行くのであれば本年6月に就航したばかりの

3代目さるびあ丸で、旅情感たっぷりのゆったりとした船上時間を

堪能することをおすすめします。

船体デザインは、東京オリンピック2020のエンブレムデザインを手がけた野老氏によるもの

 

さるびあ丸はフェリーではなく、貨客船(かきゃくせん)。

旅客輸送と貨物輸送の双方を行う船舶で、島の人々の大切な物資を運ぶ役割を

担っています。

新造船の船体は、360°自在に動くアジマススラスターによって旋回性能が高まり、

ハイブリットカーのように燃料と動力のハイブリッド化により低燃費低騒音で、

非常に静かに運航されます。

 

波のない日は寝ていてもほとんど振動を感じないほど静かです。

船内はバリアフリーに対応。通路が広がり、エレベーターも完備され、

どなたにでも利用できる客室内になっています。

また、何と言ってもこの夜行船でしか見ることができないのが東京湾夜景。

東京タワー、レインボーブリッジ、平和島付近のコンテナ埠頭、羽田沖、

そして横浜のベイブリッジ、赤レンガ倉庫、大さん橋などなど見どころ盛沢山で

目が離せません。船上からしか見えない景色の数々にワクワクします。

竹芝桟橋を出港すると間もなくレインボーブリッジとお台場夜景が見える横浜ベイブリッジと工場夜景横浜大さん橋と奥に見えるのがマリンタワー

 

船上からしか見えない景色の数々にワクワクします。

心地よい風に吹かれながら甲板でちょっと一杯。

―とても贅沢な時間です。

 

さらに、季節によって時間は異なりますが、翌朝大島に着岸すると

朝焼けも迎えてくれます。

ここまでの時間も旅の一部であり、醍醐味と言えますね。

 

知っておきたい伊豆大島 旅の豆知識

本土とは異なる島ならではの意外な点もありますので、知っておくと快適に過ごすことができます。

  1. 伊豆大島の外周は約60㎞ 山手線一周と同じくらいの大きさがあります。
    高低差もあり、徒歩移動が厳しいのでレンタカーやバスを利用しましょう。
    レンタカー予約、バスの時刻表などは事前に調べておくことをお勧めします。
    レンタカーはほとんどの場合早朝港まで迎えに来てくれます。
  2. 雨よりも風と波の影響を大きく受けます。レインウエアがあれば、
    雨も寒さもしのげるので持ち歩きましょう。
  3. 船の出港も気象状況により出帆港が元町港or岡田港と異なります。
    当日朝8時までに東海汽船ホームページ「運航状況」のページに発表されますので
    移動スケジュールとあわせて確認を。
  4. スマホ決済や電子マネーも利用できる店舗は増えてきましたが、
    基本的には現金主義で。千円札と小銭は持ち歩きましょう。
  5. 朝早くから営業される店舗やサービスが多く、船が出港した後は
    閉店時間となる店舗も多いです。
    また、コンビニエンスストア、チェーン店などはありませんので
    滞在中のスケジュールにあわせた持ち物の調達・準備も忘れずに。
  6. 携帯の電波は携帯会社や場所よって大きく異なります。
    旅を通じてデジタルデトックスをするのもいいでしょう。
    そのことによってより深く旅が楽しめる上、島の生活を感じることができます。
    但し、緊急事態などの場合、連絡が取れる方法を考えておくことも大切です。

 

世界最大級の活火山・伊豆大島のシンボル「三原山」

伊豆大島の最大の魅力は海と山、両方の自然環境を贅沢に堪能出来ること。

観光はもちろんですが、来島者の多くがサイクリング、マラソン、トライアスロン、

釣り、ハイキングなど目的をもって行かれる方がほとんどというのも特長。

 

中でも島の中央に位置し、シンボルとなっている三原山はスニーカーにジーンズという

カジュアルなスタイルでハイキングできるので一度は訪れて欲しい場所。

三原山は標高758mの低山ですが、寒暖差もあり雪も降ります。広がる緑の木々は樹海。

最近ではテレビ番組でも取り上げられ、注目された三原山は世界最大級の活火山、

ハワイ島のキラウエア火山、イタリアシチリア州の地中海にあるストロンボリ島の

ストロンボリ火山と並ぶ三大活火山のひとつ。

 

一番最近の噴火は昭和61(1986)年の大規模噴火で、噴き出した溶岩が

集落の数百メートルまで迫り、全島避難となる規模でした。

全島民に島外避難命令が出された当時の様子は今でも鮮明な記憶です。

噴火の高さも世界一だったとか。

 

以降34年の間、静かに息をひそめながら鎮座する三原山は、

島民からは御神火様(ごじんかさま)として敬われ、現在も地下活動を続けています。

 

日本で唯一の「砂漠」を歩こう

私自身、数年間仕事を通じて訪れている伊豆大島ですが、

実は三原山に登ったのは昨年のこと。

月と砂漠ラインという道を車で辿り、駐車場から徒歩で

山頂展望台を目指すことができます。

月と砂漠ラインは車一台通れるほどの幅しかなく、舗装のよい道ではないので運転に自信がない人は他のルートで行きましょう。

 

山と言われれば木立の中を歩きながら山頂の一角を目指すものを想像しますが、

三原山では登頂すると視界の開けた広いカルデラ状の山頂に到着。

その場所こそが三原山の東側に位置する「裏砂漠」です。

広大で、視界を遮るものが何もない雄大な景色に〝まるで宇宙!〟

と思わず声を上げるほどの感動。

宇宙を想起させるのはその風景だけではなく足元です。

スコリアという火山噴出物の塊でできた黒い石で、歩くとシャクシャクと音を立て、

土ではない感触がとても不思議に感じられます。

マグマが地上に噴出して形成される多孔質の小石スコリア。富士山もこのスコリアで覆われています。

山頂から裾野に広がる黒いマグマの流れた跡を見れば噴火の規模もうかがえ、

島全体が火山であり、また、地球の一端であることを感じずにはいられません。

そして、天気に恵まれると目の前に富士山が現れご褒美のような光景が見られます。

この三原山の東側に位置する「裏砂漠」と呼ばれる一帯は、

国土地理院地図の上でも日本で唯一「砂漠」と表記された場所でもあります。

東京に砂漠があるなんて想像もしませんね。

 

ジオパークならではの楽しみ方 樹海を歩く

裏砂漠は火口をぐるっと一周囲むようになっており、

ハイキングルートがいくつかあります。

先ほどの山頂展望台の反対側に位置する、大島温泉ホテルから歩いて裏砂漠を目指す

「温泉ホテルルート」は、樹海を歩くことが可能で、

そこは「いつか森になる道」と呼ばれています。

噴火で燃えなかった木々が生茂げるまっすぐな一本道「こもれびトンネル」(樹海)を

歩くこと約15分で三原山の麓に広がる原野に辿り着きます。

木々に囲まれる美しい「こもれびトンネル」

大きく開ける視界、心地よい爽やかな風、三原山の雄姿。

どれをとってもその場でしか体感することのできない素晴らしい風景です。

噴火で燃えた後樹々が復活した原野「ジオロックガーデン」。秋から冬にかけてはススキの原に。

また、伊豆大島は島全体がジオパークになっています。

ジオパークとは日本ジオパークに認定された「大地の公園」を意味し、

地球(ジオ)を学び、丸ごと楽しむことができる場所のこと。

そこで出会う様々な生き物の姿に火山岩という厳しい環境に息づく

強い生命力に目を見張ることでしょう。

噴火から30年以上の年月を経て姿を見せる動植物たち。見つけながら歩くのが楽しい。

この他にも、島内の木々は常葉樹で、ほとんど紅葉しないことも特長的で、

しかも野生生物のように自由奔放に伸びっぱなしということもあり、

高木になっていたり、根が地面より張り出してるものばかり。

島を代表する椿の木もヤブツバキと言われるもので木の高い所に花が咲いているので、

注目してみると面白いかも。

 

お菓子でも、切り株でもないバームクーヘン?

岡田、元町の港から大島一周道路を南西へ下って行くと左手に見える絶壁。

地理の教科書で見たような縞模様の美しい地層切断面が現れます。

それこそが「バームクーヘン」。

 

気の遠くなるような長い年月をかけて何降り積もってきた

火山灰等の堆積物が層をなしてできた地層です。

高さ約24メートル、長さ630メートルの圧倒的スケール。

これほどの規模で露出している地層は日本ではほどんどありません。

大地の歴史を前にして人間がちっぽけな存在であることを感じずにはいられないのです。

人間という生き物の小ささを感じるほど圧巻する地層切断面「バームクーヘン」

参考サイト:伊豆大島ジオパーク

三原山の裏砂漠も、樹海も、この地層も、そこに生息する数々の植生物も全て

〝教科書の中身〟を体験することができるのが伊豆大島のすごいところ。

日本全土を見てもこうして一度に体験できる場所に巡り合うことはありません。

全て一見の価値ありです。

 

詩人・歌人の愛した「波浮港」も火口だった

伊豆大島の南部に位置し、川端康成の短編小説「伊豆の踊子」の

舞台となった波浮港(はぶみなと)。

明治から昭和初期にかけて、与謝野鉄幹・晶子夫妻、林芙美子、幸田露伴、土田耕平や、

野口雨情が「波浮の港」と歌にするなど、さまざまな文人が保養や作品を執筆するために

滞在した小さな漁師町です。

波浮港は明治・大正時代の木造建築が残るフォトジェニックな場所ですが、

実はここも火山火口の跡地。

 

9世紀中頃に島の南東部海岸で割れ目噴火が発生し、

マグマと海水が接触して水蒸気爆発を起こし、火口湖が形成されました。

その後、江戸時代末期に人工的に湾口を拡げたことによって

現在の岩壁に囲まれ円形が途切れたような袋状の形に形成されています。

 

また、その形からか荒波が立つようなことはあまり無く、

かつては遠洋漁業の中継港にもなっていたそう。

静かな波を携え、水量豊かで透明度の高い海水はまるで湖のような穏やかさを

感じられます。

当時の様子が垣間見える木造建築が並ぶ波浮の町並み

川端康成の名作「伊豆の踊子」のモデルになった旧港屋旅館は木造3階建ての建物

ここ数年で波浮の高台地域には本土からの移住者が経営するゲストハウスや

フルリノベーションの宿などが建ち、今また注目されているスポットでもあり、

伊豆大島の中でも一番旅情感を味わえます。

波浮でタイムスリップするのも伊豆大島での過ごし方の一つです。

 

自然・歴史・文化のすべてを感じよう

東京と一言に言い尽くせない環境。

リゾート島とは異なり、自然・歴史・文化が一体となり情趣溢れる伊豆大島。

どの側面から見ても教科書の中身を実感することばかりで感嘆します。

見るだけではなく、地球の息吹を感じる空気に包まれ、

スケールの違いを体感することがこの島の最大の魅力。

 

幾度となく訪れていますが、何度も魅力を確かめるように訪れており、

知れば知るほどに趣があり、新しい発見と感動を得てまた訪れたくなります。

 

噴火も、台風や土砂災害などの自然災害も一つずつ乗り越えて生きる

力強い逞しさがそこにあり、ダイナミックな自然とパワーを感じることができる伊豆大島。

今回ご紹介していない、食文化や風習など様々な視点の楽しみ方があり、

まだまだ知らないこと、見ていないものもたくさんあるので、

これからも訪れるのが楽しみです。


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